私が社会人1年生の頃の思い出話です。

初めての受持ちクラスは4歳児すみれ組。
担任を任されて半年が過ぎた頃の事でした。
いつもは自園調理の給食が用意されるのですが、この日はお弁当持参日でした。何故だったのかは、ずいぶん前で思い出せません。

昼食時間中、背後から男児の明るい声が聞こえてきました。
「せんせい~目をつぶって手を出して~」
振り向くと小さな手に何かを握っていました。
言われた通りにすると、私の手の中に何かを入れました。
「目を開けていいよ~」と男児。
手を開いてびっくり!!そこに見えたものは苦手な虫でした。
正確に言うとイナゴの佃煮でした。
他県で育った私はそのころイナゴが食べれることすら知りませんでした。
私にとって死んだバッタが手の中に置かれた感覚しかなかったのでした。
「美味しいから食べて!先生にあげる」と男児。
心の中はかなり焦っていました。

小さい頃に従兄に遊んでもらっている時、悪ふざけで毛虫を投げられて逃げ回った経験から、昆虫=投げられる=動く=怖いという思考回路が私の中にあったのです。
私の心臓は高鳴りバクバク!
「あ、ありがとう、、、」と答えるのが精いっぱいでした。

結局、そのイナゴは男児に見えないように隠しながらティッシュに包んでゴミ箱の中へ捨ててしまいました。その行動が、後悔と罪悪感に苛まれることになるとはその時は、思いもよりませんでした。

なんと男児は、私がポイした姿をしっかりと見ていたのでした。
男児ママとの会話で初めて知り後悔しました。
そのイナゴは男児にとって特別なものでした。
ママ手作りの佃煮で、栄養満点な好きな一品を入れてもらいお弁当時間を楽しみに園へ登園した男児でした。本当は男児が一番食べたかったもの。それを食べずに私へご馳走してくれたのでした。ママの愛情と家庭的な素材の味が子どもの活力を倍にすると感じていたので、なんて事をしてしまったのかとかなり落ち込んだものでした。

それから時を経て、幸いにも私は昆虫など生き物が得意な先生達や子ども達と出会うことが出来ました。それぞれの生態を知るうちに今では虫嫌いは克服できましたが、年月が経った今でもその時のことは鮮明に覚えています。

私は未だにバッタとイナゴを間違えます。間違えると子ども達が教えてくれます。

私「ほら、イナゴだ!」
子「違うでしょ、バッタでしょっ!」
子「イナゴってね、人間の米を食べて悪いことするけど、良いところもあるんだよ」
私「へぇ~そうなの?」

私「あっ!ダンゴムシのオスだ」
子「ブッブッー メスでした(笑)」

そんな会話をしながらちょっとズレた園長に、正してくれる子ども達がいたり大人顔負けの知識を持っていたりする事に気づかされます。
育てるつもりが、育てられているのでしょうね。泣いている子どもに寄り添っていると、泣いている気持ちも理解できるようになりました。
あの時の男児は今どうしているのかな?仕事頑張っているかな?ママは元気かな?などと考えることがあります。経験から学んだ事をさらに繰り返さないように毎日を大切に楽しみ、子ども達と一緒に笑って一緒に泣いて共に成長したいとつくづく思っております。
明日もいぶき保育園の子ども達にとって、良い一日でありますように願いながら。

やる気!元気!いぶき!もうすぐ運動会!
2023,10,5 園長 阿部千鶴子

 

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